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低身長とは
これまで「身長をいかに伸ばしたらいいか」をテーマに、食習慣から運動、生活習慣や睡眠のとり方まで、少しでも、「身長が低いこと」、それをコンプレックスにしないためには、どうしたらいいか、について、お話ししてきました。そして、そこで前提となっていたのは、あくまでも、身長は伸び悩んではいるものの、それ以外は至って健康である人、そういった人たちに向けての対策です。しかし、身長が低い人の中には、その原因が何かしらの疾患による場合もあり、検査を要することもあるのです。
マイナス2SD以下の低身長の中でも、特に心配なのは右表に示したマイナス2.5SD以下の低身長が、お子さんに見られる場合です。マイナス2.5SD以下となると身長は同学年の児童平均より相当、低いレベルとなり、成長ホルモンや甲状腺ホルモンに何らかの異常が見られる可能性も否定できません。また、「急激に身長の伸び率が悪くなり、伸長が横ばいになってきた場合」、「年間の伸長率が4cmに達しない場合」にも何らかの疾患が原因であることが考えられます。そのような場合は、小児科で適切な検査を受け、医師に何らかの診断を仰いでおいた方が安心ですし、何らかの異常が認められるのであれば、少しでも早い医学的な対応が必要なのは言うまでもありません。 ※「基準成長曲線」で使われているSDとは「標準偏差(Standerd Deviation)」のことを指しています。統計値や確率変数の散らばり具合が平均値からどの程度、隔っているかを数値で示したものです。 低身長の原因上記に示した「低身長の目安表」で、仮に医学的な見地から「低身長」であると分かった場合でも、それが、即治療の必要な低身長の原因に起因するとは限りません。子供の低身長が心配な親御さんも、まずはその原因を、しっかりと把握することが大切になってきます。 病気が原因でない低身長低身長である場合でも、以下のようなケースは治療の必要はないと考えられます。しかし、これらが低身長の原因と結論づけられるのは、あくまで、検査を行った結果、治療を必要とする原因が見当たらず、「病気ではない」と診断された場合になります。 ☆家族性低身長症・体質性低身長[小人症]その人、個人の体質や遺伝的要因に根ざした低身長。低身長で悩む人の半数が、この要因にあたり、ホルモン治療の対象外で医学的な低身長とはなりません。「親の身長が低いと子供も身長が低い」、といった相関関係は実際にあり、両親とも身長が低い場合、子供の身長が伸び悩みむことはよくあるケースです。 ☆胎内発育不全性低身長IUGR(子宮内胎児発育遅延)による低身長です。先天性感染症、染色体異常、胎児性アルコール中毒症、薬物中毒、喫煙、また、胎盤機能不全、妊娠中毒症、慢性高血圧、腎疾患、心疾患、膠原病、Graves病,糖尿病などの母体合併症などを原因として、胎内での発育が悪かった場合、IUGR児の10〜15%が低身長になる可能性を持っているというデータがあります。 ☆思春期遅発症思春期になっても、なかなか身長が伸びず、低身長に悩んでいる人の中には、この傾向の人も多いはずです。「早熟型」とは対照的な「晩成型」といえ、高校生以降、急激に身長が伸び、最終的には平均か、それ以上まで成長することもあるのが「思春期遅発症」の特徴です。中学卒業時には、クラスで一番身長の低かった子が、1、2年後に会って見ると、自分より身長が高くなっていて驚いた、といた経験をされたことのある人は意外と多いのではないでしょうか。それが典型的な「思春期遅発症」の成長パターンです。もちろん、低身長の治療の必要はありません。女子よりも男子に多く、この傾向は見られます。 病気が原因の低身長以下にあげるのは、医学的に治療の必要があると診断される低身長です。ホルモン治療によって、改善が見られるケースもあります。 ☆思春期早発症先述の「思春期遅発症」の低身長とは逆に、思春期が早く訪れ、身長も一時的には良く伸び、周りの子供に比べ、発育も良好に写るのですが、結果として、成長期は非常に短い期間で終わってしまい、身長は平均より低くなってしまう場合、これは「思春期早発症」と判断できます。日本人が欧米人に比べて身長が低いのは、日本人の子供たちの思春期が世界でも稀なレベルで短いため、など「早熟と低身長」については何度もお話しましたが、思春期は緩やかに長いほど、身長はよく伸びる傾向にあります。ですから、男性ホルモンや女性ホルモンの異常で(体質や遺伝もありますが)早い段階で思春期を迎えてしまうと、それだけ低身長のリスクは高くなるのです。思春期を遅らせるような治療が有効になります。 ☆タ−ナ−症候群による低身長染色体の異常によっておこる「タ−ナ−症候群」が低身長を招くことが分かっています。X染色体に異常をもつ女性にのみ発症し、その割合は2000人に1人と言われています。最終身長は140センチ前後であることが多く、女児に低身長が見られる場合は「タ−ナ−症候群」の可能性を見過ごしてはならないでしょう。マイナス2標準偏差以下の低身長女児の4〜5%が、これにあたると考えられています。成長ホルモン投与の治療が有効である場合もあります。 ☆軟骨異栄養症による低身長
軟骨異栄養症とは「軟骨無形成症(achondroplasia)」と「軟骨低形成症(hypochondroplasia)」の総称ですが、軟骨無形成症のみを指す場合もあります。これらは、長幹骨が化骨しない全身的な骨系統先天性疾患で、軟骨の増殖に先天的な障害が見られるために、手足の関節部の骨軟骨の成長が悪く、低身長となります。
「軟骨無形成症」は腕や足が短く、座高は比較的伸びるのが特徴と言えます。三尖手などの特徴もあり、また、女性の場合は骨盤が浅く、出産が困難になることも可能性として考えておかなければならないといえます。 ☆成長ホルモン分泌不全性低身長症
成長ホルモン分泌不全性低身長症(下垂体性小人症)は成長ホルモンの分泌不全によって引き起こされる低身長です。マイナス2標準偏差の低身長児の10〜15%が、この症状に当てはまると考えられています。発症の男女比は3:1で男児に比較的多くみられる特徴があります。成長期を向かえる以前の10歳頃までにホルモン治療を受けると低身長改善の効果は高いと言います。 成長ホルモンや甲状腺ホルモン以外にも、その不足によって低身長のリスクが高まるものに、体内の水分量を調整する「パソプレッシン」、女性ではプロゲステロン、男性ではテストステロンを産生する「ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)」、副腎や副腎皮質ホルモンに関わる「副腎皮質刺激ホルモン」などが挙げられます。 ☆甲状腺機能低下症と低身長
甲状腺機能低下症は低身長の子供にみられる場合、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)と呼ぶのが一般的です。甲状腺ホルモンの合成や分泌の機能に障害があり、血中の甲状腺ホルモンが不足してしまい、身体的に様々な症状を引き起こします。特にクレチン症は低身長などの発達障害を起すことで、よく知られています。甲状腺は、のどぼとけの辺りに蝶々のような形で存在していて、成長に必要なホルモンを作っています。
1.「甲状腺、それ自体の機能的問題」 ・・・などです。TSHの不足から甲状腺ホルモンが分泌されにくい症状を、特に「中枢性甲状腺機能低下症」といいます。クレチン症で多く見られる「甲状腺、それ自体の機能的問題」には、
1.「甲状腺のない欠損性」
・・・の3つのタイプがあります。
☆愛情遮断性低身長愛情遮断症候群による低身長。家庭内、また社会的な問題から母性的な養育が受けられなかった子どもが、精神的、身体的に発達障害を起すことがあります。子供が成長する過程において、母性的な愛情は大変、重要なのは言うまでもない事実です。そのコミュニケーションが上手く取れなかった場合、子供にとっては大きなストレスとなります。母親自身に子供への愛情が欠損しているケースや、母親の入院や死別、離婚などが切っ掛けになる場合も多々あります。母親の愛情が欠損しているケースで見られるのは、子供を無視したり食事を与えないなどの消極的な虐待と、直接的に暴力を振るう積極的な虐待ですが、どちらも子供の負うトラウマは大きく、その事が成長ホルモンの分泌に影響を与え、低身長を招くと考えられています。詳しく調べてみると、愛情遮断性低身長の子供は特に睡眠時の成長ホルモンの分泌が低いレベルであることが分かっています。子供のみせる「目を合わせない」「子供らしい表情にかける」「親との身体的な接触を嫌がる」「よく、かんしゃくを起す」「寝つきが良くない」などは「愛情遮断症候群」のシグナルといえます。また、愛情の不足に加え、母親の無関心から食事も十分に与えられないケースもあり、栄養の不足も低身長に拍車をかけていることが多いようです。子供に愛情を持てない母親は、実は自分自身も親から愛情を受けずに育っていることがあり、そういった、「世代間における負の伝達」は、どこかで断ち切らなければならない問題なのですが、家庭やその家族、母親個人の内面にも深く関わる部分も多く、一言に「断ち切る」といっても、難しいテーマであることは否定できません。 ☆慢性腎不全性低身長症慢性腎不全の子供は発育が滞り、低身長になる可能性が高いことが知られています。慢性腎不全とは腎臓障害に端を発し、腎臓のネフロン組織が破壊され、慢性的、また不可逆的に腎臓機能が低下してしまう状態をいいます。小児慢性腎不全の場合、初期には低身長のほか頻尿や発熱、貧血の症状が見られます。腎臓は体液のうち身体にとって有害な老廃物を尿として排出する一方、身体に必要な成分は体内に還元するという「ろ過機能」を担っています。同時に血圧や体液の成分バランスもコントロールし、身体の内部循環を支え、ホルモン分泌のコントロールなどにも欠かせない役割をしています。ですから、これが機能低下となると、身体の中の老廃物は体外に排出されにくくなり、健康を保つための身体の内部循環は損なわれてしまうのです。急性腎不全が短時間で腎機能を低下させるのに対して、慢性腎不全は数年から数十年をかけて機能不全に陥っていくのが特徴です。急性腎不全が治療によって機能回復が見込まれるのに対して、慢性腎不全は一度失われた機能を回復することが出来ないのも、また、特徴のひとつです。手術や薬によって治せる病気ではないので、治療法としては食事療法での食事のタンパク質を減らすことで、腎機能低下を遅らせるほか、薬物療法や透析療法、腎移植などの選択肢もあります。 ☆プラダー・ウィリー症候群の低身長
プラダー・ウィリー症候群とは15番染色体の異常によっておこるとされる遺伝病です。本症状の多くに低身長が見られるのは、成長ホルモンの分泌不全が原因と考えられています。その他の症状としては、筋緊張低下、思春期の遅延、また、高度の肥満となり2型糖尿病を発症する場合も多く見受けられます。 |
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