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低身長とは

これまで「身長をいかに伸ばしたらいいか」をテーマに、食習慣から運動、生活習慣や睡眠のとり方まで、少しでも、「身長が低いこと」、それをコンプレックスにしないためには、どうしたらいいか、について、お話ししてきました。そして、そこで前提となっていたのは、あくまでも、身長は伸び悩んではいるものの、それ以外は至って健康である人、そういった人たちに向けての対策です。しかし、身長が低い人の中には、その原因が何かしらの疾患による場合もあり、検査を要することもあるのです。
低身長(成長障害)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。単に「クラスで何番目に身長が低い」や「両親の身長が低いために自分も身長が伸び悩んでいるような気がする」、といった、あいまいな比較や思い込みではなく、科学的なデータに基づき、「同年代の平均より身長が明らかに伸び悩んでいる状態である」と判定されるのが低身長です。
男女別の「基準成長曲線」(日本人の子どもの身長、体重を調べて、年齢ごとにその平均値をつないでいったもの)に自分の身長を照らし合わせることで、平均値から、どれだけ身長が低いかを客観的に知る事ができます。
以下に「低身長の目安」となる2つの表を示しました。マイナス2SD以下になると「低身長」の可能性が高くなります。低身長の定義は2つあり、「平均値がマイナス2SD以下」である場合と「1年間の身長の増加(成長率)が同性同年齢の子どもの平均値の80%以下(マイナス1.5SD以下)が2年以上続くこと」となっています。
お子さんの成長が周りの子供さんに比べて、「遅いんじゃないか」と心配なさっている、親御さんは一度、下の表とお子さんの年齢ごとの身長を比較してみるといいかもしれません。統計的にプラス2SD〜マイナス2SDの平均的な範囲内に児童の95%が含まれることになります。マイナス2SD以下になる比率を分かり易くいえば、100人の児童の内の最も身長の低い1〜2人の児童といったイメージでしょうか。身長が低い場合でもプラス2SD〜マイナス2SDの範囲内ならば低身長の心配はないというう訳です。

 

低身長マイナス2SD目安表 低身長マイナス2.5SD要検査目安表

マイナス2SD以下の低身長の中でも、特に心配なのは右表に示したマイナス2.5SD以下の低身長が、お子さんに見られる場合です。マイナス2.5SD以下となると身長は同学年の児童平均より相当、低いレベルとなり、成長ホルモンや甲状腺ホルモンに何らかの異常が見られる可能性も否定できません。また、「急激に身長の伸び率が悪くなり、伸長が横ばいになってきた場合」「年間の伸長率が4cmに達しない場合」にも何らかの疾患が原因であることが考えられます。そのような場合は、小児科で適切な検査を受け、医師に何らかの診断を仰いでおいた方が安心ですし、何らかの異常が認められるのであれば、少しでも早い医学的な対応が必要なのは言うまでもありません。
身長が伸び悩む原因の全てが成長ホルモンの異常などを原因とする低身長ということではありませんが、「身長が低い=病気」という発想を持っている人は一般的には少ないといっていいでしょう。
風邪を引いて高熱がでたり、交通事故にあったりすれば当然、病院へ行って診察を受けるはずですが、「低身長だから」といって、診察を受けるのは躊躇されるかもしれません。それだけに「身長は低いが元気はいい」、「しっかり栄養も摂っているし、その内伸びるのではないか」、「遺伝もあるだろうし、悩んでも仕方がない」などの理由で重大な疾患が見過ごされている可能性もあるのです。低身長だからといって、特に身体が痛む訳ではありませんから、そう考えてしまうのも、無理はない話しかもしれません。しかし、身長が勢い良く伸びる期間とは人生の「ほんの一時」といって、差し支えないほどの短い期間です。この「伸び盛り」の時期を逃してしまっては、後で泣くに泣けない状況を覚悟しなければならないのです。思春期から青年期を経て、低身長であることがコンプレックスとなってしまえば、心に深い傷を負ってしまったも同然です。その先の長い人生に深い影を落とさないとも限りません。現代の医療技術で全ての低身長が改善されるとは言い切れません。しかし、子供の低身長に対し、周りの大人たちが一定の認識を持って、必要があると思えるケースであれば、迷わず小児科での診察を進めることも、子供を見守るという意味での、ひとつの大きなファクターと言えるのです。

※「基準成長曲線」で使われているSDとは「標準偏差(Standerd Deviation)」のことを指しています。統計値や確率変数の散らばり具合が平均値からどの程度、隔っているかを数値で示したものです。

低身長の原因

上記に示した「低身長の目安表」で、仮に医学的な見地から「低身長」であると分かった場合でも、それが、即治療の必要な低身長の原因に起因するとは限りません。子供の低身長が心配な親御さんも、まずはその原因を、しっかりと把握することが大切になってきます。


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病気が原因でない低身長

低身長である場合でも、以下のようなケースは治療の必要はないと考えられます。しかし、これらが低身長の原因と結論づけられるのは、あくまで、検査を行った結果、治療を必要とする原因が見当たらず、「病気ではない」と診断された場合になります。


☆家族性低身長症・体質性低身長[小人症]

その人、個人の体質や遺伝的要因に根ざした低身長。低身長で悩む人の半数が、この要因にあたり、ホルモン治療の対象外で医学的な低身長とはなりません。「親の身長が低いと子供も身長が低い」、といった相関関係は実際にあり、両親とも身長が低い場合、子供の身長が伸び悩みむことはよくあるケースです。


☆胎内発育不全性低身長

IUGR(子宮内胎児発育遅延)による低身長です。先天性感染症、染色体異常、胎児性アルコール中毒症、薬物中毒、喫煙、また、胎盤機能不全、妊娠中毒症、慢性高血圧、腎疾患、心疾患、膠原病、Graves病,糖尿病などの母体合併症などを原因として、胎内での発育が悪かった場合、IUGR児の10〜15%が低身長になる可能性を持っているというデータがあります。


☆思春期遅発症

思春期になっても、なかなか身長が伸びず、低身長に悩んでいる人の中には、この傾向の人も多いはずです。「早熟型」とは対照的な「晩成型」といえ、高校生以降、急激に身長が伸び、最終的には平均か、それ以上まで成長することもあるのが「思春期遅発症」の特徴です。中学卒業時には、クラスで一番身長の低かった子が、1、2年後に会って見ると、自分より身長が高くなっていて驚いた、といた経験をされたことのある人は意外と多いのではないでしょうか。それが典型的な「思春期遅発症」の成長パターンです。もちろん、低身長の治療の必要はありません。女子よりも男子に多く、この傾向は見られます。



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病気が原因の低身長

以下にあげるのは、医学的に治療の必要があると診断される低身長です。ホルモン治療によって、改善が見られるケースもあります。


☆思春期早発症

先述の「思春期遅発症」の低身長とは逆に、思春期が早く訪れ、身長も一時的には良く伸び、周りの子供に比べ、発育も良好に写るのですが、結果として、成長期は非常に短い期間で終わってしまい、身長は平均より低くなってしまう場合、これは「思春期早発症」と判断できます。日本人が欧米人に比べて身長が低いのは、日本人の子供たちの思春期が世界でも稀なレベルで短いため、など「早熟と低身長」については何度もお話しましたが、思春期は緩やかに長いほど、身長はよく伸びる傾向にあります。ですから、男性ホルモンや女性ホルモンの異常で(体質や遺伝もありますが)早い段階で思春期を迎えてしまうと、それだけ低身長のリスクは高くなるのです。思春期を遅らせるような治療が有効になります。


☆タ−ナ−症候群による低身長

染色体の異常によっておこる「タ−ナ−症候群」が低身長を招くことが分かっています。X染色体に異常をもつ女性にのみ発症し、その割合は2000人に1人と言われています。最終身長は140センチ前後であることが多く、女児に低身長が見られる場合は「タ−ナ−症候群」の可能性を見過ごしてはならないでしょう。マイナス2標準偏差以下の低身長女児の4〜5%が、これにあたると考えられています。成長ホルモン投与の治療が有効である場合もあります。


☆軟骨異栄養症による低身長

軟骨異栄養症とは「軟骨無形成症(achondroplasia)」と「軟骨低形成症(hypochondroplasia)」の総称ですが、軟骨無形成症のみを指す場合もあります。これらは、長幹骨が化骨しない全身的な骨系統先天性疾患で、軟骨の増殖に先天的な障害が見られるために、手足の関節部の骨軟骨の成長が悪く、低身長となります。
最終身長は130センチ前後、マイナス2標準偏差の低身長児の2〜3%がこれに当たると言われ、特に手足が短いのが特徴といえます。
「軟骨低形成症」は「軟骨無形成症」とO脚変形、起立時の腰部前彎など、症状が似通った部分もあることから、重度の違う同疾患と思われがちですが、これは、間違っていて、実は、まったく別の疾患になります。発症率は無形成症よりも低く、また、生まれた直後は主だった症状が認められないため「軟骨低形成症」と判断できないことが多いのも特徴です。それと分るのは、だいたい乳幼児期以降になることが、ほとんどです。原因は線維芽細胞成長因子の受容体の一つ、FGFR3のチロシンキナーゼ領域における点突然変異と考えられています。治療は骨延長や成長ホルモンの投与が中心となります。ホルモン治療の効果は「軟骨無形成症」に比べ高いと報告されていて、伸長は良好を示す場合が多いようです。

「軟骨無形成症」は腕や足が短く、座高は比較的伸びるのが特徴と言えます。三尖手などの特徴もあり、また、女性の場合は骨盤が浅く、出産が困難になることも可能性として考えておかなければならないといえます。
原因はとしては「軟骨低形成症」と同じく、FGFR3の点突然変異と考えられています。FGFR3は骨が縦に伸びようとするのを抑制することから、低身長が起きようです。発症率は2500人に1人の確率で、比較的、高い確率で見られる印象です。「軟骨無形成症」の遺伝様式は常染色体優性遺伝ですから、この症状を持つ人と、そうでない人との間に生まれた子供は50%の確率で、また、同疾患をもつ人同士では75%の確率で子供にも、この症状が遺伝すると考えられています。ただ、実際には「軟骨無形成症」の80%の人が、この症状のみられない両親から突然、生まれているといいます。


☆成長ホルモン分泌不全性低身長症

成長ホルモン分泌不全性低身長症(下垂体性小人症)は成長ホルモンの分泌不全によって引き起こされる低身長です。マイナス2標準偏差の低身長児の10〜15%が、この症状に当てはまると考えられています。発症の男女比は3:1で男児に比較的多くみられる特徴があります。成長期を向かえる以前の10歳頃までにホルモン治療を受けると低身長改善の効果は高いと言います。
原因としては、脳の下垂体前部、前葉に何らかの障害があり、成長ホルモン分泌が低下してしまうために起こると考えられますが、その内、何故、そのような機能障害を起すのか原因の分からないケースが全体の2/3あり、頭蓋咽頭腫や下垂体内腫瘍といった後天的に理由の分かるものは1/3に留まるといいます。成長の遅れは、幼児期がら顕著になり、成長の推移を表に現すと、その曲線は至ってなだらかで、成長の様子は僅かしか認められません。症状の程度によっては、身体的成熟や骨年齢が遅れ、正常な思春期を迎えられない事もあります。

成長ホルモンや甲状腺ホルモン以外にも、その不足によって低身長のリスクが高まるものに、体内の水分量を調整する「パソプレッシン」、女性ではプロゲステロン、男性ではテストステロンを産生する「ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)」、副腎や副腎皮質ホルモンに関わる「副腎皮質刺激ホルモン」などが挙げられます。


☆甲状腺機能低下症と低身長

甲状腺機能低下症は低身長の子供にみられる場合、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)と呼ぶのが一般的です。甲状腺ホルモンの合成や分泌の機能に障害があり、血中の甲状腺ホルモンが不足してしまい、身体的に様々な症状を引き起こします。特にクレチン症は低身長などの発達障害を起すことで、よく知られています。甲状腺は、のどぼとけの辺りに蝶々のような形で存在していて、成長に必要なホルモンを作っています。
「甲状腺ホルモン」が不足する理由として考えられるのは、

1.「甲状腺、それ自体の機能的問題」
2.「甲状腺ホルモンの分泌を促す甲状腺刺激ホルモン(TSH)の不足」
3.「TSHの分泌を促進する視床下部からの甲状腺刺激ホルモン分泌ホルモン(TRH)の不足」

・・・などです。TSHの不足から甲状腺ホルモンが分泌されにくい症状を、特に「中枢性甲状腺機能低下症」といいます。クレチン症で多く見られる「甲状腺、それ自体の機能的問題」には、

1.「甲状腺のない欠損性」
2.「甲状腺の形状や場所が正常でない異所性」
3.「形状、場所とも正常にも関わらず機能しない合成障害」

・・・の3つのタイプがあります。
また、甲状腺ホルモンの原料となるヨードをお母さんが過剰に摂取すると一時的に赤ちゃんの甲状腺機能を低下させることがあります(一過性甲状腺機能低下症)。ヨードは昆布などに多く含まれていますので、子供さんを低身長のリスクに晒さないためには、その摂取に気を付けた方がいいでしょう。
クレチン症の赤ちゃんが見せる症状としては、「黄疸」「泣き声のかすれ」「汗の量が少ない」「便秘」「泣く回数が少なくよく眠る」などのことがシグナルとして知られています。早期に発見できれば、回復の度合いも高く、低身長に悩まされず、成長していける可能性も高くなります。


☆愛情遮断性低身長

愛情遮断症候群による低身長。家庭内、また社会的な問題から母性的な養育が受けられなかった子どもが、精神的、身体的に発達障害を起すことがあります。子供が成長する過程において、母性的な愛情は大変、重要なのは言うまでもない事実です。そのコミュニケーションが上手く取れなかった場合、子供にとっては大きなストレスとなります。母親自身に子供への愛情が欠損しているケースや、母親の入院や死別、離婚などが切っ掛けになる場合も多々あります。母親の愛情が欠損しているケースで見られるのは、子供を無視したり食事を与えないなどの消極的な虐待と、直接的に暴力を振るう積極的な虐待ですが、どちらも子供の負うトラウマは大きく、その事が成長ホルモンの分泌に影響を与え、低身長を招くと考えられています。詳しく調べてみると、愛情遮断性低身長の子供は特に睡眠時の成長ホルモンの分泌が低いレベルであることが分かっています。子供のみせる「目を合わせない」「子供らしい表情にかける」「親との身体的な接触を嫌がる」「よく、かんしゃくを起す」「寝つきが良くない」などは「愛情遮断症候群」のシグナルといえます。また、愛情の不足に加え、母親の無関心から食事も十分に与えられないケースもあり、栄養の不足も低身長に拍車をかけていることが多いようです。子供に愛情を持てない母親は、実は自分自身も親から愛情を受けずに育っていることがあり、そういった、「世代間における負の伝達」は、どこかで断ち切らなければならない問題なのですが、家庭やその家族、母親個人の内面にも深く関わる部分も多く、一言に「断ち切る」といっても、難しいテーマであることは否定できません。


☆慢性腎不全性低身長症

慢性腎不全の子供は発育が滞り、低身長になる可能性が高いことが知られています。慢性腎不全とは腎臓障害に端を発し、腎臓のネフロン組織が破壊され、慢性的、また不可逆的に腎臓機能が低下してしまう状態をいいます。小児慢性腎不全の場合、初期には低身長のほか頻尿や発熱、貧血の症状が見られます。腎臓は体液のうち身体にとって有害な老廃物を尿として排出する一方、身体に必要な成分は体内に還元するという「ろ過機能」を担っています。同時に血圧や体液の成分バランスもコントロールし、身体の内部循環を支え、ホルモン分泌のコントロールなどにも欠かせない役割をしています。ですから、これが機能低下となると、身体の中の老廃物は体外に排出されにくくなり、健康を保つための身体の内部循環は損なわれてしまうのです。急性腎不全が短時間で腎機能を低下させるのに対して、慢性腎不全は数年から数十年をかけて機能不全に陥っていくのが特徴です。急性腎不全が治療によって機能回復が見込まれるのに対して、慢性腎不全は一度失われた機能を回復することが出来ないのも、また、特徴のひとつです。手術や薬によって治せる病気ではないので、治療法としては食事療法での食事のタンパク質を減らすことで、腎機能低下を遅らせるほか、薬物療法や透析療法、腎移植などの選択肢もあります。


☆プラダー・ウィリー症候群の低身長

プラダー・ウィリー症候群とは15番染色体の異常によっておこるとされる遺伝病です。本症状の多くに低身長が見られるのは、成長ホルモンの分泌不全が原因と考えられています。その他の症状としては、筋緊張低下、思春期の遅延、また、高度の肥満となり2型糖尿病を発症する場合も多く見受けられます。
プラダー・ヴィリー症候群という呼び名は、今から50以上前の1956年にスイス医師プラーダー氏とヴィリー氏が学会で、この症状を発表したことに由来します。発症率は1万人〜1万5千人に1人の確率と言われています。低身長の治療としては、平成13年から成長ホルモン療法が適用されるようになりました。


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